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※トラブル120のifストーリーです。

「ハイ、コレが持って来たプリント」
「あ…ありがと…」
ソワソワと目線を動かしながら唯は、リトからプリントを受け取った

(お、落ち着かない…)

自分の部屋なのに、まるで知らないところにいるかの様だ

(結城くんが私の部屋にいる───…)

ただ、それだけの事実が唯からいつもの調子を根こそぎ奪っていってしまう
(た…頼まれた事とはいえ、結城くんが私の家に来るなんて…)
生まれて初めて異性が、それも好きな人が自分の部屋にいる事に、さっきから心臓の音がうるさいほど高鳴っている
そしてリトはというと───―
(う…。女のコと部屋で二人っきりって妙にキンチョーするぜ…。何か…何か話さねーと)
慣れないシチュにさっきから目はキョロキョロ、おかしな汗まで掻き始めていた

(何か…何か話さねーと…)
(…結城くんが私の部屋に来てる…結城くんが…)
(あぁ…。やっぱ何話していいのかわかんねーよ…)
(ってどうしてさっきから黙ってるわけ? …何か言いなさいよ…)

「あ、あのさっ」
「な、何?」

急に声を上げたリトにビクンとさせながらも、唯は、努めて冷静さを保とうと手を握りしめた
リトの言葉を待つ間、コクンと白い喉が音を立てる

「お、オレ…」
「うん…」

ドキン、ドキン、ドキン、ドキン…
心臓の音がいつもより大きく聞こえる
そればかりか、衣ずれの音や、ツバを飲み込む音までもやけに大きく聞こえる
キュッと布団を握りしめる白い手と、ギュッと握りしめられる少し汗を掻いている手
どちらも何も話さないまま
チクタクチクタク、時計の針の音を挟んだ後、リトはようやく口を開いた

「お…オレ、帰るな」
「え…」
「そ、その、プリント届に来ただけだから! それにこれ以上ココにいるワケにいかーよ!
古手川、風邪引いてるのに」
「ぇ…あ、ちょ…」
「じゃ、じゃあまた学校でな」
自分でも情けないと思ってしまう
女の子とまともに会話すら出来ないどころか、逃げる様にその場から立ち去ろうとしている
(オレ…情けねェ…)
ガックリと肩を落としながらドアへと向かおうとする足がふいに止まる
「え───?」
後ろを振り返ると、ベッドからうんと腕を伸ばした唯が、リトの手を握りしめていた
「古手…川…?」
「……帰らないで…」
「え…」
「もう少し居てくれたっていいじゃない…」
「え…?」
それっきり会話が途切れてしまう
どちらも何も話さない
お互い手を繋いだまま、繋がったまま
チクタク、チクタクと、時計の針が進む音だけが部屋に響く

「……」
「……」
「……えっと…その…」
やがて、ぼそぼそとしゃべりだしたリトに、唯はハッと手を離した
「あ…えっと…そ、そういう意味じゃなくて……ほ、ホラ、せっかく来てくれたんだし、もっとゆっくりしていけばいいじゃない! 別に急ぐ事もないんでしょ?」
「そりゃまァ…」
「な、ならいいじゃない!」
「そう…だよな? はは…」
リトはギコチない笑みを浮かべながらカバンを置くと、再び元いた場所に腰を下ろした
これではさっきの逆戻りになるわけだが、どういうわけか、あのまま帰ってはいけないと、そう感じた
それに────
(…なんかさっきの古手川って……)

手を握りしめていた表情
どこか寂しそうに、切なそうに、けれど必死な感じがして

いつもは見られない唯の顔にリトの心拍数が上がっていく
(古手川ってあんな顔するんだな…)
そんなリトの気持ちなど知るはずもない唯は、さっきまでリトの手を掴んでいた自分の手を見つめていた
胸からドキ、ドキ、ドキ、ドキ、とうるさいほどに鼓動が鳴り続けている
(何やってるのよ私は…)
さっきの出来事が頭から離れない

帰ってほしくなかった
一人にしてほしくなかった

(だからって───…)

横目でチラリとリトの様子を見ると、リトは、さっきからソワソワしながら部屋の中をキョロキョロと見ていた
(わ、私の部屋を見てる!?)
その事実に胸の鼓動がどんどんと早くなっていく
(やだ…。何か恥ずかしい…。な…何もヘンなもの置いてないわよね…)

「古手川」
「な…何!?」
「お前ってさ…」
急に思い詰めた様に、リトは一点を見つめたまま黙ってしまう
(…真剣なカオ…何を言う気!?)
白い喉の奥にコクンとツバが落ちていく
リトは手を伸ばすと近くにあったぬいぐるみを手に、唯に向き直った

「もしかしてネコ好き?」
「え…」
いつかの公園と同じように”心の準備”をしていた唯にとって、リトの言葉は不意打ちに近いモノで────
恥ずかしさと、そんな自分への憤りで、思わず声が上ずってしまう
「そ、そそ、そうよ悪い!?」
「い、いや、何か意外だったから…」
「も、もういいでしょ!? ちょっと! それ返してよっ!!」
リトからお気に入りのぬいぐるみを取り返すため、身を乗り出す様にして腕を伸ばした唯の身体が、ふいにグラつく
かけ布団に手を滑らせそのままバランスを崩してしまったのだ
「あ…」
「おっおい!!」
ドサッっという音と供に唯は床に落ちてしまう
「だっ大丈夫か古手川っ!!」
「……っ!?」
間一髪、床に落ちる直前、リトに抱きとめられた唯は、リトの両腕両足に包まれながらリトの胸の中で身体を預けていた
声が出ない
胸になにか触れているような感じはするが、そんな事に構っていられる余裕は今の唯にはない

(結城くんが、それもこんな間近に───!?)

背中に感じるぬくもりと、やさしくて強い腕の感触
慣れない
何度となく似たような状況にはなってきたけれどまるで慣れない
そればかりか、回を重ねる毎にどんどん身体が心が熱くなっていく
カァァっと耳まで真っ赤になりながら何も言わない唯を不審に思ったのか、リトは少し身を起こすため手に力を入れようとして────その手が止まった
ムニュっと柔らかい肌ざわり
それでいて押し返すような弾力
恐る恐る自分の手元を覗き見たリトの口から声にならない声が飛び出る
「……!!!」
「……っ」
キュッと身体が固くなる唯に、リトは慌てて手を離した
「わ、悪ィ! そんなつもりじゃ…」
「…ぃ…わよ」
「へ?」
「……いいわよ別に。その…気にしてないから…」
リトは何を言われたのか一瞬理解できなかった
その目をパチパチと瞬いて、頭の中で言葉を反芻させる
「……へ? それってどーゆー…」
「……」
唯は今の自分の顔を見られたくないのか、顔を俯かせるとぼそぼそと声を紡ぎ始める
「だ、だから別に気にしてないって言ってるでしょ……悪い?」
「いや…そーゆーんじゃなくて、えっと…アレ…?」
どちらも言葉に詰まり、考えがうまくまとまらない
ただ、互いの体を寄せたまま、黙って自分の胸の鼓動だけに耳を傾けていた

背中に触れるリトの感触が心地いい
やさしくて、あったかくて、いつもの匂いがして

(私、求めるの……? 結城くんを───?)

その手を、そのぬくもりを
そう意識した瞬間、唯の手は自然とリトの手に重ねられていく
「え…?」
ピクンと反応するリトの指に自分の指を絡ませていく。一つ一つ指を確かめる様に

「古手…川?」
唯の胸の前で互いの手を握り合う、リトと唯
唯はゆっくりと頭をリトの胸に預けると、少し顔を持ち上げジッとリトを見つめた
長い睫毛が揺れ、熱を帯びたかの様に濡れた瞳が、唯をいつも以上に妖しく彩る
リトの喉にゴクリとツバが落ちていく
「古手……川…?」
「…うん」
時が凍り付いたかの様に互いを見つめ合ったまま、手を握り合ったまま
やがて、少しすると唯がさらに身体を寄せてきた
触れ合いそうなほどに近づく唇
とろけそうになるほどの甘い香り
その黒い瞳は自分しか映していない。世界でただ一人自分だけを

(古手川ってこんな可愛かった……っけ?)

リトの手にわずかに力がこもる
胸の前で握り合う手は、やがて誘われるかの様に、唯の胸に当たる
パジャマ越しに伝わる柔らかい肉感と少し火照った体温
唯は何も言わない
その瞳にリトを映したまま、キュッと唇を噛み締めている
トクン、トクンと、胸に触れる手に鼓動が伝わってくる
心地よくて、熱くて、そして、何かを待っているかの様な音
リトは両手と両足でギュッと唯の身体を抱き締めた

「ん…結城…くん」
「何…?」
「……」
「……」

どちらも口を噤んでしまう。代わりにその唇が少しずつ近づいていく
緊張と恥ずかしさでわずかに震える唯の手を、リトは力と想いを込めて握り返す
少しでも不安や怖さを紛らわせるように
それはリトにしてみたら無意識のリードだったのかもしれない
鼻先数センチで何かを確かめる視線と、まだ戸惑っている視線とが交わる
長いようでいて一瞬の交差の後、二人はゆっくりと唇を重ねていった

「ん…あふ」

初めてのキスは重ねるというより、少し触れ合うだけのものだった
けれど、それだけで十分だ
リトと唯、二人の心臓の音が一層激しくなっていく

「…また、していい?」
「……うん」

恥ずかしそうに小さく頷くだけの唯を両腕で抱き締めると、今度は少し強引に口を寄せた

「あ…ふ」

口元からこぼれる吐息さえ逃しまいと、リトの身体に力が入る

少し汗ばんだリトの手
けれどもその手を唯は決して離そうとはしなかった
リト以上の想いを乗せて握る
自分の気持ちから逃げない様に、見て見ぬフリをしない様に
自分の想いを正面から受け止める様に

「ン、ふ…」

息を吐き出す様に離れていく唇に代わって、今度は互いの顔を見つめ合う
どちらも耳まで真っ赤に染まった顔に、その目に互いの顔を映している

「すごく…ハレンチだわ」
「だな…」

少しの沈黙の後、どちらともなくクスクスと笑い始める
緊張の糸が切れたのか、落ち着きを取り戻したのか
どちらの顔も曇り一つない、とっても晴れやかなものになっている

「責任…ちゃんと取らなきゃダメだからね? わかってるの?」
「ああ…。一応……彼女ってことになるのかな?」
「か、かか、カノ…!? そ、そんなお嫁さんとか早すぎるわよっ!!」
「……いや、飛び過ぎだって古手川…」
「え!? ええ…そ、そうよね! わ、わかってるわよ!!」

どう見てもしどろもどろになっている唯に半眼になるも、その慌てぶりにすぐに笑みがこぼれてしまう

「何よ?」
「何でもないよ」
「む~…じゃあどうして目を合わせないのよ? 結城くん。こっちを向―――くちっ」
「って大丈夫かよ? ちょっと身体、冷えてきたんじゃねーか?」

リトの言うとおり、背中や腕なんかはまだあったかいけれど、足の先などは冷たくなっていた

「ん…平気よ」
「けど、くしゃみしてるじゃん?」
「これぐらい……くしゅっ!」
「ホラ、言ってるそばからそれだろ。そろそろベッドに戻ったほうがいいって」

リトは唯の身体を起こそうとするが、その手を振り払うかの様に唯は、リトに身体を預けてきた

「おい」
「……もうちょっと」
「けど…」
「…ゃ…だ」

か細い、消え入りそうな声でそう呟くと、唯はそのまま頬をリトの胸に押し当ててきた

「古手川?」
「…ん…」

唯は身体をピッタリとくっ付けたまま動こうとはいない

(もしかして甘えて……え、えっとこんな時、どーすりゃいいんだ?)

空いた腕をあわあわと動かす内、やがてリトは、左手を恐る恐る唯の頭に乗せた

「…ん」

ピクっと動く頭に慌てて手を離しそうになるも、何も言ってこない唯に大丈夫と感じたのか、再び手を頭に乗せるリト

長くて流れる様なキレイな黒髪に、リトの手は自然と前後に動かされていく
女の子の頭を撫でたことなんてないリトの手は、ギコチない
こそばゆい様な、くすぐったい様な感触に、唯の表情がほっと綻ぶ
唯はうれしかった
今まで遊や家族にしか触れさせなかった髪
その髪を今、大好きな人が撫でてくれている
唯は胸に顔をうずめながら、誰にも見せたことのない笑顔を浮かべた

もちろんそんな唯の顔はリトからは見えるはずもなく
リトは今だビクビクしながらも頭を撫で続けた

「ちょっとくすぐったい」
「わ、ワリィ!」
ビクッと驚いたかの様に手を離すリトに、唯はスッと顔を上げた
ジッと見つめてくる紫がかった黒い瞳にリトの背中に汗が浮かぶ
「な、何?」
リトの疑問を余所に唯の両手がまっすぐに伸びてくる
(や、ヤバい…っ!!)
怒られる! 反射的にギュッと目を瞑って身構えたリトを待っていたのは、意外なモノだった

「……好き」
「へ…?」

首筋に回された腕に引き寄せられたリトは、そのまま唯の唇に触れた
「ん!?」
目にいっぱいに映る唯の顔と、柔らかい唇の感触と、ほのかに香る髪の匂い
それらを全てすっ飛ばして、リトの脳裏にあるのはただ一つの事だった

(い…今、オレ、好きって言われた……?)

さっきから散々、手を握って、身体に触れて、キスを繰り返して、責任取ってと言われ
だけどここにきてようやくリトは、唯の心に触れた実感を得た
(古手川ってオレのこと…)
今さらそんな事言えるはずもなく、代わりにリトは目を瞑ると、唯と同じ様に背中に腕を回し、その身体を抱き寄せた
それから何度キスを繰り返したのか
唇から糸を引かせながら顔を離した唯は、風邪のせいかキスの余韻のせいか、いつもより赤くなったまま

(また…また私…結城くんとキス…)
ハレンチだとわかっていてもやめられない
触れ合うたびに心地よくて、そのままとけてしまいそうになってしまう
なにより、リトとキスをするという事が、唯はとても幸せに思えた
指先で唇のラインをなぞっていく
さっきまで触れ合っていた場所
繋がっていたところ
また…また────…
想いはどんどん強く大きくなっていく
「…結城…くん」
「へ?」
唯と同じ様にどこか呆けた顔をしていたリトは、その呼び声に現実へと引き戻される
「ど…どしたんだ?」
「うん…、あの…」

止まらない…止まってくれない
結城くん……あなたのせいなんだからね…

「古手川?」
膝立ちになった唯は、リトの顔の正面まで行くと両手をリトの頬に当てた
「へ?」
やわらかくて、スベスベしている白い手に、今は、ほんのりと熱がこもっている
「な、何…」
「…好き」
「え?」
「結城くんが好きなの…悪い?」
「わ、悪いっつーか全然そんなコトなくて…だから…その……え?」
視線を逸らそうにも唯の眼差しから目を逸らせない
逆にグッと惹きこまれて動けなくなってしまう
「こ…古手川」
「結城くん」
徐々に近づく顔
わずかに開いた口からこぼれる甘い吐息が鼻をくすぐる
唇同士が触れ合い、そして、離れていく
「は…ぁ」
おデコとおデコをくっ付け合い、手と手を握り合い、指と指を絡ませ合い
互いの顔を見つめ合う
「もっと…」
「していいのか?」
「…うん。私を結城くんだけのモノにして…」
きっと精一杯の想いと勇気をのせて言ったに違いない
唯の声も肩もずっと震えていたから
「古手川…」
「ん…」
リトは唯の手を引き寄せると、身体を密着させた
大きな胸をリトの胸に押しつけながら、唯は夢中でキスを繰り返す
この時間、この瞬間を刻みこむ様に
やがて、少し大きな舌が自分の唇を割って入ってくる感触に、唯は身体を強張らせた
握りしめた手にも力がはいる
(結城くんの舌が…こんなキス…)
一瞬の躊躇いの後、すんなりとその舌を受け入れている自分に唯は少し驚く
(あぁ…私、ホントに結城くんと…)
いつも、ずっと、想い描いていた事に身体が素直に悦びの声を上げている

(いけない事なのに私……悦んでる…。ずっと…ずっとこうしたいって想って…)
その声に従うかの様に唯は自分の舌を絡ませていった

稚拙で不器用な舌使いは、中々、二人を結びつけず、すれ違ってばかり
カチカチと歯が当たっては、どちらもゴメンなさいの表情を浮かべ
それでも、二人は身体を決して離さなかった

次第に水音が混じるようになっていき、そして────

「はふ…ん…ぅ」
口元から涎をこぼしながらも、唯は首筋に腕を回してリトにしがみ付いていた
口内を舐められ、唾液を吸われる感覚にはまだ戸惑ってしまう
(こんなハレンチなキス…)
想い描いていたキスは、もっとやさしくて、甘くて、とろけるようなモノだった
リトに合わせる余裕なんてない。一生懸命なキス
そしてそれはリトも同じ
女の子とキスどころか手も握った事もないのだから、余裕なんて微塵も生まれない
リードしなくちゃ、と思う気持ちも生まれない
ただ、必死に舌を口を動かしていく

制服の背中のシャツを握りしめる唯の手にギュッと力がこもる
わずかに目を開けたリトは、少しだけ苦しそうに眉間に眉を寄せている唯の表情を見る
(もしかして…)
やっと生まれたわずかな余裕
リトは舌を絡ませたままゆっくりと口を離した
舌の先端と先端が離れても、唾液のアーチが二人を繋ぐ
口元を唾液で汚しながら唯はゆっくりと息を吐いた

「ゴメン…。苦しかった?」
「別に私は……それより結城くん」
「何…?」
「ちょっと吸いつき過ぎよ! 私、もっと優しいのがよかったのにっ」
「う…ご、ごめん」

シュンと肩を落とすリトに唯は口元に笑みを浮かべた

「…でも、うれしい」
「え?」
「結城くんとあんなにいっぱいキスできて。うれしいの」
「古手川…」

いつか見せてくれた笑顔の何倍も可愛いその笑顔に、リトの胸がときめく
その想いそのままにリトは唯の両肩に両手を置いた

「…な、何?」
「その…続き! してもいいかなって?」
「つ…続き?」

聞かなくたってリトの顔を見ればなんの事を言っているのかわかる

「そ、そんなコト…」

唯は目を彷徨わせたまま、どこを見ればいいのかわからなくなってしまった
リトの顔をまともに見られなくなってしまう

さっき自分でも言ったばかりなのに、こうして面と向かって言われると、まだ気持ちが揺らいでしまう

(だって…だってそんなコト…)

結城だけのモノになりたい! 結城くんだけの…
だけど…だけど……

「古手川」
「…っ!?」
頬に触れるリトの手の感触に心が震える
「やっぱダメか?」
「そ…そんなコト誰も…」
彷徨っていた目がふいにリトと交わる
それだけで、キュンとスイッチが入ったような気がした
唯は頬に触れているリトの手に自分の手を重ねると、恥ずかしそうに呟いた
「……優しくしなきゃダメだからね…」
「ああ、わかった」
このままとけて消えてしまいそうなほどに儚く弱く映る唯の身体をリトは両腕で抱き締めると、そのまま床に寝かした
長い髪が床に広がり、わずかに開いた襟元から胸の谷間がのぞいている
リトは四つん這いになるとジッと真上から唯の顔を見つめた

キレイだと思った

長くて艶やかな黒髪も、今は少し赤く火照っている白い身体も、紫色が混じる、濡れた黒い瞳も
古手川唯という一人の女の子がどうしようもないほどにキレイに映る
「…ん、な…何よ…」
ジッと見つめられることが恥ずかしいのか、唯の頬が赤に染まっていく
「そ、そんなにジッと見られたら私…」
「古手川…」
「ん? 何…ん、んっ!!」
返事を待たない少し強引で、不意打ちのキス
目、いっぱいに映るリトの顔に目を大きくさせ驚くも、唯は少しするとリトの背中に腕を回した
今度は少しだけ気持ちを踏み出して、最初から舌を絡ませていく
相変わらず下手で戸惑いの混じるキスだけれど、今の二人はそれでもいいと思った
お互いの事を想いながらするキスが、こんなにも気持ちいいだなんて思わなかったから
しばらくキスをかわす内、ふいに胸元に感じる違和感に唯は眉をひそめた
(何…?)
と、疑問を挟むまでもなく、すぐにその正体がわかる
「古手川のムネ…見たい」
「え…」
いつの間にかパジャマのボタンに手をかけているリトに、唯は声を詰まらせた
「古手川のムネ…嫌?」
「…い、嫌じゃない…けど…、結城くんが見たいなら……だ、だからってヘンなコトしたらダメだからね!」
唯の声を聞いているのかいないのか、すでに息が荒くなっているリトは、胸元から視線を逸らさない
(やっぱり結城くんってハレンチだわ…)
思わず目を細めそうになった唯の顔が、けれどふっとやわらかくなる
(でも、そんな結城くんも私…好きなのよね。きっと―――)
慣れない手つきで一生懸命ボタンを外そうとしているリトに、唯はやわらかい笑みをこぼした
そして、その頭に手を置くと、髪を梳くように撫でていく

「何だよ? やっぱ嫌なんじゃねーのか?」
「違うわよ」
さっき頭を撫でてくれたお返しよ、と唯は含みを込めて笑みを浮かべた
その笑顔にドキン――――と自分の中の何かが音を立てたのをリトは感じた
唯の笑顔は母性的で、可愛くて、キレイで
自分の一挙手一投足全てに、白い頬を薄紅色に染める唯がたまらなく愛おしく想えた
最後のボタン一つ残して固まるリトに唯は眉を寄せる
「どうしたの?」
「い…いや、なんか古手川の事がスゲーかわいいなって思ってさ…」
「……ッ!!? な、なな、何言ってんのよ!!?」
顔を真紅に染めながら、そのまま起き上がってポカポカと殴ってきそうな勢いの唯に、リトは慌てて弁明を述べた
「ほ、ホントだって! ウソなんかじゃねーって!!」
「ホントでもウソでもそんな事言わないでっ!! バカッ!!!」
ガンバって褒めたつもりなのに――――予想に反して唯を怒らせてしまったことにリトは、ガックリと項垂れた
そんなリトの様子を横目に、唯はなんとも苦い顔になってしまう
(か、かわいいとか……そんな事、私…)
今まで、そんな言葉とは縁がなかった唯
いつも言われてきた言葉は、”カタイ”"厳しい”"キツイ”"うるさい”等々
(私がそんな…)

『古手川の事がスゲーかわいいなって』

「……ッ!!」
想いだすだけで、顔がにやけてとろけそうになってしまう
チラリとリトの様子を確かめると、リトは相変わらずバツが悪そうな顔をしていて
(……結城くんに私…褒められた…の?)
唯は躊躇いがちに手を伸ばすと、リトの頬に両手を当てた
「へ…?」
「しないの? …続き」
「続きって……いいのかよ? だって…」
「……オレのモノにすんじゃなかったの? まだされてないんだけど?」
まだ口を尖らせて話す唯だけれど、その表情は小さな子供がわがままを言っている時の様だと、リトは思った
リトは苦笑を浮かべながら少しイタズラっぽく訊いてみた
「もう怒ってないんだ?」
「…知らないわよ」
怒っているようで、それでもどこかやわらかい顔の唯
“やっぱ古手川は古手川だな…”、とリトは心の中でそう呟いた

リトは自分の頬に触れている唯の手に自分の手を重ねると、そのまま握り返し、唯の手の甲にキスをした
「ん…」
「古手川の全部オレに見せてくれるのか?」
「…うん」
唯がそう返事をすると同時に、リトは最後のボタンを外した
ハラリと広がるパジャマから白い肌が露出する
赤いパジャマの真ん中に現れる白のラインが艶やかに映える
わずかに見えるおヘソと、息をする度に上下に動く胸
シャンプーの匂いとは違う、唯の純粋な肌の匂いに、リトの鼓動が速くなる
ゴクリ――――、と喉を鳴らしながら、震える手でパジャマに手をかける

「それじゃあ……脱がすからな?」
唯はわずかに身を捩るだけで何も応えない
本当に自分に全てを任しているのか、恥ずかしさで声が出ないだけなのか
答えのわからぬまま、リトは唯のパジャマをはだけさせた

薄い肩に浮き出る悩ましげな鎖骨のライン
手の平サイズよりも大きめな胸はブラなど着けておらず、その魅力をいっぱいに溢れさせリトを釘付けにした
白くてモチモチの弾力は、今も唯が息をする度にプルプルと小刻みに震え
その先端を彩るサクラ色の突起はリトを誘っているかの様だ
細いくびれと、かわいいおヘソの腰回り
その全てがシミ一つない白磁の色で彩られた唯の身体

この日、何回目かになるリトが唾を飲み込む音に、唯は顔と言わず身体まで赤に染まった

「ちょ…ちょっと結城くん! そんなジロジロ見ないでよねっ。恥ずかしいわ…」
「へ……あ、ああ。そ、そりゃそーだよな!」

そう返すも、すでにリトの頭の中はいっぱいいっぱいだった
(す…げー…、ララとかとやっぱ違うんだな…)
当り前の事なのだが、これまで女の子と付き合った事がないどころか、裸と言えば、ララか、美柑か、母親であるリンゴぐらいしか見た事のないリトにとって、唯の裸はまさにいろんな意味で衝撃だったのだ
(……こ、このあとってどーすりゃいいんだ…?)
パニックになった頭に理性が中々、追いついてこない
唯の恥ずかしそうに身を捩る仕草に汗がどんどん噴き出してくる
「え…えっと……さ、触ってもいい?」
「え!? さ、触……ぃ…いわよ! 結城くんだから」
「オレ……だから?」
それは唯の中の自分が特別だという証だ
リトは一つ心の中で気合いを入れると、ゆっくりと手を伸ばしていった

白い乳房に指先が触れると、それがスイッチだったのか、吸いつくようにリトは手を這わせていった
「や…ん、ん」
突然やってきた未知の感覚に唯の口から甘い声がこぼれる
「古手川のおっぱい、すげーやわらかくて気持ちいい…」
両手を使って胸全体を揉みしだくリトに、唯は声を熱くさせながら訊いた
「結城くんってムネ好きなの?」
「え? つーか古手川のおっぱいが好き。ずっとこーしてたいぐらい」
「ずっととか……もぅ、ハレンチだわ結城くん」
唯の声は嗜めるでもない、どこかうれしそうな声だ
「もっと…してもいいんだからね」
「もっと?」
「…うん。だって結城くんのモノなのよ?」
期待と羞恥の混じるその視線に、リトはゆっくりと口を近づけていった
「じゃあ舐めてもいい?」
「ん…ぁそんなコト…訊かないでよねっ」
唯の返事が終わるよりも早く、リトの舌が先端を掬いあげる
「ひゃ…あ…ふ」
「ちょっと汗の味がする」
「だ…だってぇ…熱出てるから…寝汗が…ぁ」
その汗の味すら愛おしむように、リトは舌を絡ませると、口をすぼめて乳輪を吸い上げていく

「ん…ん、ぁ」
「やっぱおいしい! 古手川の…」
「ば…バカ…ぁ、おいしとかそんなハレンチな事…ん…」
両手で揉みしだかれ、口で吸い上げられ、舌で乳首を刺激され
唯の口からどんどん卑猥な声が溢れ出す
「もっと…もっと聞きたい…。古手川のかわいい声」
「へぇ…?」
すでにトロンととろけた目に映るリトは、唾液の糸を引かせながら顔を上げると、するすると手を移動させていく
おヘソの周りを撫でるように過ぎていくと、ズボンに手をかけるリト
「ちょ…ちょっと…」
「ココ…いい?」
「……う、ま、待っ…………もぅ…ぃ…いわよ…、どうせダメって言っても聞かないクセに。ホントにハレンチなんだから」
と口を尖らせつつもすっかり自分に全てを委ねている唯に、リトは見えない様に苦笑をした

ズボンの中に入っていく自分以外の手の感触に身体が震える
何度かリトを想いながら触れたことのある、大切なところ
そこにリトが触れるという不思議な感覚に、心のどこかがざわざわとざわめく

「ヘンなコトしたら…許さないからねっ」
精一杯の強がりを見せるも、すでに唯の下腹部は力が抜けきり、触れる前から腰がピクピクと小刻みに震えていた
期待と不安、好奇と羞恥の混じる唯の反応に、リトの息も上がる
ショーツの上から恥丘の上を滑る指は、ほどなくして割れ目に当たった
「ん…」
眉間に眉を寄せ、ギュッと手を握りしめる唯はどこか緊張の色が濃い
リトはその緊張をほぐす様に、ゆっくりとショーツの上から割れ目をなぞっていった
「あふ…」
腰をわずかに浮き上がらせ、何かにジッと耐える唯
その間もリトの指は、割れ目に沿って上下運動を繰り返す
徐々に開いていく脚にしたがって、唯の声も艶を帯び始める
シュリシュリとショーツを擦る指に、溢れだした蜜が絡まり、ベットリとショーツを濡らしていく
「すげ……古手川のココ…、もうビチョビチョじゃん」
「だ…だって、結城くんが…ぁ…ん、く…いっぱい触るから…ぁっ」
「…もっと触ってもいいか?」
いつの間にか好奇と欲に満ちた牡の顔になっているリト
息も荒く、手の動きを決してやめようとしない
(結城くん……あんなハレンチな顔して……、結城くんも欲しいの? 私みたいに…)
唯は何も言わずただ、首を小さく振った
「……じゃあ、コレ脱がすな?」
腰をわずかに浮かした唯の下腹部から汗をすったパジャマと、ベットリと濡れたショーツが脱がされていく

「…ッ…!!」
火照った肌が外気に触れる気持ちよさと、人前でさらけ出した自分の大切な部分に、唯の身体が小刻みに震える
「足…閉じたまんまだと見れないって」
「……わかってるわよ。そんな事…」
いつもの強気な態度がウソのような唯
小さな声に、その仕草もどこか小さな子供を感じさせるほどに弱々しい

「ちゃ…ちゃんとしなきゃダメだからね? わかってるの結城くんっ」
わかってる、と苦笑を浮かべるリトにまだ半信半疑ながらも、唯はゆっくりと足を広げていった
「……ッ」
恥ずかしさと、背徳感に身体中が熱くなる
(うぅ…こんなコト…)
開ききった足の間にすぅっと冷たい外気が染み込んでくる
それ以上に、ジッと熱っぽく見つめるリトの視線でどうにかなってしまいそうだ
唯はギュッと目を瞑ると、少し声を尖らせた
「もう! そんなジロジロ見ないでっ」
「……古手川のココ、ピンク色ですげェキレイだ…」
「ば…何言って……もぅ…そんないっぱい見たらダメ…」
リトの言葉一つで身体中の力が抜けていってしまうが、どうすることもできない
(結城くんに見られてる…私の……)
そう思うだけでアソコがキュンと熱くなる
わずかに開いた入口は、まるでリトを待ちわびているかの様にヒクヒクと動く
(ダメ…ぇ…そんなに見たら私…)
もじもじと動く腰に合わせ、割れ目から溢れ出した蜜がつーっと床に落ちていく
小さな水たまりと、本能を刺激するには充分すぎる唯の女の匂いに、リトの喉が鳴った
「ゆ…結城くん…、そんな見てばっかりは嫌ぁ…、もっと…もっと私の事…」
ハチミツの様な甘い声に、心の中の何かがとろけていく
「古手川…」
リトは本能に赴くままに唯に身体を寄せた

クチュクチュと愛液を絡ませながら、リトの指が膣内に入っていく
中は思った以上に温かくて、膣壁がキュウキュウと指を締め上げていく
「ぁ…ふ」
わずかに腰を浮かせながら熱い息をこぼす唯に、リトの心拍数が上がっていく
指を折り曲げ、唯の弱いところを探す様に、中を弄っていく

「すごい…古手川のココ…、オレの指しゃぶってるみたいだ…」
「も、もぅ…またそんなハレンチな事言って…私を…ん」

なんて返すものの、唯自身、自分の秘所を中心に下腹部全体が、どうしようもないほどに熱くなっているのに気づいていた
足の震えも、腰を動かしてしまうのもやめられない
もっと、もっと、と身体がリトを求めて止まらない
しばらく中を掻きまわした後、ふいにリトは指を秘所から抜いた
指はとろりと濃厚な蜜でヌラヌラといやらしく濡れている

「古手川のすげェ…やらしい…」
「…っツ…」

恥ずかしさで真っ赤に染まる唯の前で、リトはその濡れた指を自分の口に運んでいく

「や…やめて…そんなの汚いわ」
「そんな事ねーよ。だって古手川のなんだからさ」

チュパチュパとキレイに舐め取っていくリトに、唯の表情はなんとも言えない恍惚としたものへと変わっていく

(結城くん…私のあんなにキレイに……ッ)
もじもじと擦り合わせていた太ももがゆっくりと開いていく

「古手川?」
「……べ…別にその…結城くんがしたいならもっとしても…いいかな」

声は震えているし、目も合わせてくれないけれど、リトはそんな唯に苦笑を浮かべた

「もっとしてもいいんだ?」
「べ、別に私は……ゆ、結城くんがしたいならって言ってるじゃないっ」
「……じゃあもっとしたい! 古手川ともっと…」

スッと身体を寄せてくるリトに、唯の心臓が警笛を上げる
ジッと裸を見つめるその視線に、アソコがキュンと締め付けられる

「古手川…」
「…は…ふ」

もはや返事すらまともに返せないぐらい、息が熱くなる

「……してもいいか?」

ドキン――――と脳髄がしびれるほどに胸が音を立てた

「え…ぁ…な、何が?」

自分でも間の抜けた事をきいているとわかる
それでも唯に残った最後の理性がそう呟いた

「何ってその……だから…」

言い難そうに頭をポリポリと掻いているリトに、唯はゴクリと唾を飲み込んだ

「だ…だから?」
「だから……こ、古手川とその…したいなって…思ってて…」

リトは湯気が出そうなほど真っ赤になりながら、それでも唯の目をジッと見つめながら言った

「こ、古手川の中に入れたい」
「……っ!?」

太ももに当たるリトのモノはすっかり膨らみ切っていて、切ないほどに自己主張をしている

(結城くんのあんな……すご…、私の事想って大きく…)
「ダメか?」
「……ダメじゃないわ……、い、言ったじゃない。私を結城くんだけのモノにしてって! だから…」

今この瞬間は誤魔化しも、言い訳もしてはいけないと唯は感じた
だから、精一杯の想いを込めて言う
自分の気持ちを

「私も…私も結城くんがほしい! 結城くんじゃなきゃ嫌! 結城くんじゃないとこんな気持ちになれないのっ。だからお願い…」
「古手川…」

しばらく上下で見つめ合ったあと、リトはいそいそとベルト外し、ズボンから勃起したモノを取り出すと、唯に身体を寄せた

クチュリと先端と入口が触れ、水音が鳴る

「わ…私、初めてだから……だから優しく…」
「わかってる」

そう短く返すも、リト自身、自分の事で精一杯だ
さっきから竿を持つ手が震え、中々、思う様に挿入口を探し当てられない

「あ、アレ? なんで…」
「ん…そこ違う…」
「こ、ココ?」
「あ…もう…ちょっと下…」

先端が上下に擦れる度に、唯の秘所から愛液が、まだかまだかと溢れ出してくる

「もっと…ん、ぁ」
「あ…えっとココ?」
「ん…ん、そ、そこ。そこぉ…」

何回目かのすれ違いの後、唯の秘所は、ゆっくりとリトの肉棒を咥え込んでいった

「ぁ…ン、ンン」

狭い中を広げて入ってくる熱い肉の感触に、唯は目をギュッと瞑った

(何なのコレ…こんなの…)
「ちょ…古手川、もーちょっと力抜いてくれないとオレ…」

唯の膣内はリトをキューッと締め付ける
その強さに気を抜けば一気に果ててしまいそうだ

「そ、そんな事言ったって…あなた男でしょ? 男ならなんとかしなさいよね」
「んな事言ったって…」

リトは歯をくいしばると、少しずつ奥へ奥へ突き入れていく

「結城くんのがどんどん入って……ん、く」

しばらくすると、どちらとも言わずお互いの顔を見つめた
リトの先端が唯の純潔の証に触れていたのだ
唯は握りしめていたシーツから手を離すと、スッと両手をリトに差し出した

「結城くん、お願い…。手…握って」
「いいよ」

リトもつらいとわかっていたが、甘えずにはいられなかった
これから一生の内、最初で最後の「痛み」がくる
唯はその事をリトに伝えたかった

「痛み」ではなくリトへの「想い」を少しでも多く
自然と胸の中でこれまでのリトとの出来事や、その時感じた事、想いが溢れてくる

第一印象は最悪だった
元から要注意人物としてマークしていたが、その言動に、初日から最悪の烙印を押してしまった
ハレンチで、ララさんと一緒に騒ぎばかり起こす問題児で
だけど、そうじゃないって少しずつわかってきた―――
子供のような顔に溢れるばかりの優しさを込めて笑う結城くん
それはいつの間にか、私の一番好きな顔になっていた
不器用で、頼りなくて、カッコわるくて
だけど、誰よりもカッコよくて、優しくて
そんな結城くんに私は、いつも素直になれなくて、すぐ怒って、すぐ叩いて
いつもキツクあたって
自分でも堅いってわかってる
優しくなんてない事ぐらいわかってる
私は、ララさんみたいに可愛くないし、明るくもできない
あんな風に自分の気持ちを言えない
笑顔一つ見せられない―――
きっとこれからも
だけど…だけど……それでも…それでも―――

「古手川」
「え…?」

いつものやさしい声と、ふいに頬に触れるあったかい感触に、唯は目を開いた
目の前にはいつものリトがバツが悪そうに微笑んでいて、その手でそっと頬を包んでくれていた

「結城…くん?」
「大丈夫か? ムリならムリでいいんだって。慌てなくたって古手川の気持ちとか全部オレに届いてるから。だから心配すんなって、な?」

そう言いながらニッコリと笑うリトに、なぜだか目元が熱くなっていく

「ってアレ? 何で泣いて……っておわっ!?」

急に抱き寄せられたリトは、唯の胸に顔を埋めながらくぐもった声を出す

「お、おい、古手川? どーし…」
「いいからっ。最後まで…最後までお願い! 私、大丈夫だから…」

それは、おねだりや甘えよりも切望に感じた
リトは両腕を伸ばすと、唯の頭と背中に回し、その小さな身体をやさしく強く抱き締める

「…オレ…オレ離さないから。お前が不安で怖くて痛くて震えてたら、いつもこーやって一緒にいるから。だから…だから…」
「うん。わかってる…」

唯はリトと同じ様に両腕をリトの頭と背中に回すと、同じ想いを込めて抱き締めた

唯は万感の想いを込めて、もう一度口にする

「結城くんが好き、大好き…! この先もずっとずっと…」
「古手川…」

唯のその想いが胸から聞こえる鼓動と一緒に伝わってくる
強く、強く

「ああ、オレも古手川のことがすっごく大切で大好きだよ」

その言葉に一瞬目を大きくさせた後、唯はイタズラっぽく口を尖らせた

「…ゃ…っと言ってくれた……、もぅ、言うのちょっと遅過ぎよ、結城くん」
「ゴメン…」

照れと、ごめんなさいの気持ちが混じるその声に、唯はふっと笑みを浮かべた

「……きて。結城くん。私はもう大丈夫だから、ね」
「…わかった」

その返事とともに、リトは腰を深く突き入れていく
先端が膜に当たり、唯の手にギュウウっと力こもる

「ん…んん」
「古手川?」

もう大丈夫だと言っていたが、気持ちと身体に来る痛みはまた別のもの
唯の両腕にも力がこもっていく

「唯…」
「…ん…ッ」

キュッと膣内が締まると同時に、リトは唯の純潔を汚した
ブツンと音がなり、少しすると割れ目から愛液に混じって赤が伝い落ちていく

「ん…んん…ぁぁ…」

辛そうな声を上げる唯にリトは、その身体を力をこめて抱きしめた
少しでも痛みを和らげるように
少しでも不安が拭える様に
少しすると、背中で握りこぶしを作っていた唯の手が開いていく
やわらかい手の平は汗ばんでいて、今は少し震えてすらいた

「古手川?」

リトは少し身体を離すと、唯の顔を覗き込んだ

「大丈夫か? その……下手でごめんな」

情けないほどに顔を歪めるリトに、唯はそっと微笑む

「…バカね。そんなの別に期待なんてしてないわよ。それより結城くん、さっき私の事”唯”って呼んだでしょ?」

「え!? そ、それはえっと…勢いっつーかなんつーか…」

唯はあたふたと汗を掻き始めるリトの頬に手を当てた

「……特別に許してあげる。そのかわりちゃんと最後まで、ね?」
「わかった」

リトは軽くキスをすると、再び腰を動かしていく

「ん、ん…あ」

腰を突き入れる度にくぐもった声を出す唯に顔を曇らせるも、リトは動きをやめなかった
少しでも早く痛みがなくなるように、快楽を送り込んでいく

「古手川…古手川…」
「結城…くぅん…あ、ん…結…城…く…」
「す…げぇ…気持ちイイ! 古手川の中…病みつきになりそうだ」
「なって…いくらでもなってぇ…、その…代わり、私以外のコとこんな事したら…ダメ…なんだから…ね」
「わかってる」

リトは熱い吐息をこぼし続ける唯の唇にキスをした
すぐにキスに舌が応え、リトの舌と絡み合い、唾液の交換をし始める

「…はむ…ン…ンン…ぷはっ…ハァ…ハァ…、結城くんのキス好き…」
「オレも。古手川とキスするのすげー気持ちイイよ」
「うん…」

心の底からうれしそうに微笑むと、唯はリトの首筋に腕を絡め抱き寄せる

「結城くん…」
「何?」

鼻先数センチで見つめ合いながら、二人の動きは止まらないどころか、ますます激しくなっていく
ヌプヌプと音を立てる結合部からは、赤と白が混じる愛液がトロリと溢れ
口元は、唾液の痕と涎ですっかり汚れしまっている
それでも嫌だとは思わない
それがとても幸せだと感じる
顔をジッと見つめたまま何も言ってこない唯
その瞳にリトをずっと映している唯は、なんとも言えない幸せそうな顔をしている

「さっきから何だよ?」
「……うん。あなたの顔を見ているの。私にいっぱいハレンチな事をしたあなたの顔を」
「何だよソレ」

どこかこそばゆい様なうれしさが身体中を走るのを感じた

「…はぁ…ぁ…結城くんの…またおっきく…」
「うん…そろそろ限界…かな」

ポトリと額から落ちた汗が、唯の頬を伝い口元に入っていく様に、なんとも言えない興奮を覚えるリト

小さな舌を出してその汗を舐め取ると唯はクスっと笑った

「古手川…ッ!!」
「あふっ…ん、や…もっと…」
「もっと?」
「あ…ん、ん…く」

身体を起こしたリトは、唯の腰を掴むと、腰を突き動かしていく
もう唯の身体を労るとかいう余裕は消し飛んでいた
今はもう、溜まりに溜まった欲望を吐き出したい、それだけだ

「ア…アァ、ん…ゃ…結城、くん、もっとゆっく…激し…」
「古手川…古手川…」

理性が溶け本能が自分を支配するのを止められない
パチュ、パチュと、卑猥な音を立てながら肉と肉がぶつかる度に、二人を未知の感覚が襲う

「古手川…もう…出…」
「あ…ま、待って! 私も一緒が…」

唯の言葉が終わるより早く、限界を迎えたリトの肉棒から欲望が吐き出される

「ひゃあ…かぁ…ぁ結城…くんのが出て…いっぱぁい…出て…る……」

リトを逃がさぬように締め付けられる膣の奥、子宮の中にたっぷりと注がれる熱い奔流に、
唯の身体は小刻みに痙攣を繰り返す

「すご…い…まだ出てる…。こんないっぱい…熱いのぉ…」
「ハァ…ハァ…」
「結城くんのばかぁ…。赤ちゃん…結城くんの赤ちゃん出来ちゃうのに…ぁ…」

腰にしっかりと回されている唯の脚は、次第に痙攣を繰り返しながら、腰から解けていく
二人はしばらく身体を重ねながら、荒い息を吐き続けた
唯はだらんと力が抜けきった腕を宙に彷徨わせると、リトの頭の上に手を置いた

「ん? 何だよ?」
「……キスして」
「キス?」

リトは身体を起こして唯の顔を見つめると、そのまま黙って顔を近づけた

「好きだよ。古手川」
「…うん。私も大好き…」

二人はキスを重ねると、どちらともなく互いの身体を両腕で抱き締めた
互いの性器を繋いだまま、床を転がりながら、互いの位置を入れ替えながら
上下左右、くるくると回り続ける世界の中で、二人のキスは離れては重なり、何度も繰り返す
互いに同じだけの想いを込めて何度も
秘所から肉棒を引き抜くと、愛液に混じった白濁液がゴポリと外に溢れ出す

その強烈な牡の匂いと量の多さに、リトの額に冷や汗が浮かんだ

「わ…わわ、ワリィ古手川! ちゃんと外出したかったんだけどガマンできなかったっつーか…」

あわあわと慌てるリトの目の前で、唯の目が徐々に細められていく
いつも怒られる直前に感じる寒気にも似た感覚にリトの腰が引ける

「ホントにごめん! って謝っても許される事じゃなくて、ど、どーしたら…」
「結城くん…」
「な、何?」

どこまでも凍えそうな唯の声
反射的に目を瞑って”その時”が来るのをジッと待っていたリトの頬に痛みが走る
恐る恐る目を開いたリトを待っていたのは、ジト目になりながら、自分の頬を抓る唯の姿だった

「ほへ?」
「ほへ? じゃなくて…何で名前で呼ばないのよ?」
「へ? だって…」
「許してあげるって言ったじゃない!? もう! そーじゃなくてもそれぐらいわかりなさいよねっ。ばか…」
「え、じゃー…中に出したコトを怒ってるわけじゃ…」

唯の表情は、拗ねているのか怒っているのかすぐにはわからない複雑なものになっている
ずっと勘違いをしていた自分にリトは、照れくさそうに苦笑を浮かべた

「よかったー! てっきりオレ…」
「許したわけじゃないから」
「え…?」
「…な、中に出した事よ。言っとくけど、さっきの話しとは別だからね?」

ここに来て、ようやく唯の頬が微妙に引きつっている事にリトは気付く
その肩がプルプルと震えていることも

「…ご、ごめ…」
「いったい何考えてるのよっ!!? バカーッ!!」

部屋に唯の声が響き渡った
「ったくせっかくイイ感じだったのに。相変わらずおカタイ奴」
と、壁に背をもたれながらトレイを手に遊はそう呟いた
トレイの上には○カリスエットと、湯気が立ち上っている熱々のコーヒー

誰に頼まれたわけじゃないその飲み物を手に遊は壁から背中を離した

「唯も唯だけど、アイツもアイツだな…。似た者どーしってヤツなんだろーけどさ」

唯の部屋のドアを通る時、遊の口に自然と笑みが現れる

「ま、ウルサイ奴だけど、よろしく頼むぜ結城くん!」

部屋の中からは、まだ唯のお説教と謝り続けるリトの声が聞こえてくる

「にしてビビった…!! まさか唯のヤツがあそこまで進んでるとは…、完全に油断してたぜ
…オレもがんばろ…。秋穂さんにオレがマジって事わかってもらわねーとな…」
なんて妹思いな一面を覗かせるも、すっかりお説教モードに入っている唯の耳に届くわけはなく
遊は、二人っきりのイイ雰囲気を崩さない様に、と静かに階段を下りて行った
「ホント、ごめん…!」
「もういいわよ…。それに別にダメってわけじゃないし…」
急に、もごもご口調になる唯に、リトは首を傾げた
「え…? なんか言った?」
「別にっ!! そ、それよりもな、名前は……どうなのよ?」
「どうって…」
リトは指で頬を掻きながら一人顔を赤くさせると、やがてぼそぼそと口を開いた
「じゃ、じゃあその…唯…」
唯の胸がキュンと音を奏でた

“唯”

たった一言、リトがそう呼んだだけで、なんとも言えないうれしさが込み上げてくる
「…何よ?」
一拍置いての返事だったが、ちゃんと返事してくれた事にリトはホッと胸を撫で下ろした
「もぅ、名前で呼んでもいいって言ってるんだから遠慮なんかしないでよねっ」
「ごめん…」
申し訳なさそうに顔を曇らせるリトに唯は、腕を組みながらツンっとそっぽを向けると、いそいそとベッドに戻ってしまう
まるで何かを隠すように

唯はコレで話しは終わりとばかりに頭から布団をかぶると、そのまま布団の中で丸くなった

(うぅ…もぅ、結城くんの鈍感! バカ! ハレンチ!)
(あれ…? 疲れて寝ちゃったのか…?)

頬を指で掻くこと数秒
「じゃあ…オレ、そろそろ帰るわ」
「…え!?」
と、突然、布団をガバっと捲った唯は信じられない物で見たかの様に、目を大きくさせる
「帰っちゃうの…?」
「ああ。さすがにこれ以上長居はできねーし。唯の体調が悪くなったら元も子もないだろ?」
「そ…そんな事…」
布団を握りしめる手が震える
唯はリトから視線を逸らしたまま赤くなった顔でぼそっと呟いた
「………風邪なんて…ふっとんだわよ。結城くんのおかげでね」
「え?」
「な…何でもない!」
“もっと素直に言いなさいよね! 私のバカ”、と心の中で自分の頭をポカポカ叩く唯
そうこうしている内にリトはカバンを手にドアへと歩いて行く
(結城くんが帰っちゃう…。さっきまであんなに一緒にいたのに…。なんで…)
答えは簡単で明白だ
けれども、リトが帰ってしまうという現実が、唯の心を掻き乱していく
震え続ける心のまま、唯は声を出した
「結城くん」
「ん?」
いつもと同じ声。だけど、その声にいつもとは違う成分が混じっている事に、リトは気付く
どんなに隠しても、もうわかってしまう

「どしたんだ?」
「…その……ぇ…っと…」
唯は俯いたまま両手をもじもじさせている
「唯?」
「だからその……」
「ん?」
唯は布団の下で手をギュッと握りしめると、その想いを口にした
「こ、今度また家に来て! そ、その…今日のお礼がしたいから…」
「お礼って……別にいいってこんなんで気を遣わなくてもさ」
「そうゆうコトじゃなくて…」
「は?」
相変わらず鈍感の上、女の子の気持ちに気付かない

(もぅ、気づきなさいよ…)

唯はパジャマの裾を握りしめると、チラチラとリトの顔を見つつ、ぽそぽそと口を動かした
「……イヤなの? 私の家に来るの…?」
「い、いや!! そ、そーゆーコトじゃなくてなんつーか…」
「何よ?」
唯の頬はすっかり膨れてしまっている
さっきまで甘い雰囲気なんて忘却の彼方だ
「だ、だからオレが言いたいのは…」
「言いたいのは?」
ますますぷくぅっと膨らむほっぺに、リトの額から冷や汗が伝い落ちる

「あ…だ、だからその、また来てもいいのかな…って思ってさ」
「何回だって来てもいいわよ! と言うか、あなたに来てほしいから言ってるんでしょっ?」
そこまで言ってから、今まで膨れていた頬が一瞬で真っ赤に染まる
「何回も来てもいいんだ?」
「…そ、そうよ! と、とにかくそういうわけだからっ!! 結城くんがイヤならムリしなくてもいいけど…」
嘘だ、と言った瞬間、自分でも気づいてしまう

そんな言葉聞きたくない
何回だって、何度だって来て、話して、そして――――

「……」
「……また来るよ」
「え…?」
「今度は唯が元気な時にな!」
ドアの前で振り返ったリトは、どこか照れくさそうに、恥ずかしそうに笑顔を浮かべた
「……っ」

唯は自分の胸がキュンと音を立てるのを感じた
だって、その笑顔は自分が一番好きな顔だから
世界で一番好きな人の、一番好きな顔

「……」
「―――い? お~い! 唯?」
「…へ?」
「へ? じゃなくて…」

いつの間にボーっとなっていたのか、リトの呼び声に目をパチパチさせると、唯は慌てて表情を引き締めた

(しっかりしなさい! ちょっとうかれすぎよ!!)
「ホントに大丈夫なのかよ?」
心配と呆れが混じった視線を向けてくるリトから、唯は気まずさから顔を背ける
「ホントに大丈夫だから、その……心配しないで」
「ふ~ん、ならいいんだけどな」
指先で頬を掻きながら話すリト

本当はもっと心配してほしい
本当はもっと一緒にいてほしい
他愛ない話でもいい
そばにいて、隣りで座っていてくれる、それだけで

なんてコトを胸の内で考えてしまう自分に唯は、顔が上気してくるのを感じると、布団で顔半分を隠してしまう

「汗拭きたいから…部屋から出ていって」
「あ、悪ぃ。じゃ、オレ、帰るから。ホントにムリすんなよ?」
「もうわかったから!」
「なんか食って、あったかくして寝ろよ」
「もう! 結城くんじゃあるまいし、それぐらいちゃんとやるわよっ!!」
「だな…」

リトは苦笑を浮かべるとドアを開け部屋の外に出た

「…ぁ…」
ふいにおとずれる損失感にも似た感触
ポッカリと空いた穴を慌てて埋めるかの様に、唯は声を上げた
「結城くんっ!!」
「ん?」
振り返ったリトはいつもの顔で、いつもの声で
唯は自分の中にある気持ちにあらためて触れる

私…私……
こんなに結城くんの事…
大好きなんだ

もう好きじゃない
それだけじゃ足りないところまできてしまっている

さっきまで触れ合っていた手が、重なっていた身体が、冷たくて、寂しく想える
唯は布団の中で手を握りしめた

「…また……またね、結城くん」
「おう。また、明日な!」

遠ざかる声と、振り返らない背中
今すぐに追いかけて、手を掴んで、抱き付いて、その背中にいっぱい甘えて
でも、そんなことできなくて

また名前…呼んだら……そしたら来てくれるかな…?
結城くんって……

唯は膝を抱えると、その膝にうずめる様に顔を俯かせた
「…また…明日か……。ちょっと永いな…」
そして、リトが帰って一時間あまり―――
熱も収まりどこか足取り軽く階段を下りてきた唯は、リビングにひょいと顔を出した

「あ、お兄ちゃん」
「お! なんだよ”ゆうきくん”はもう帰ったのかよ?」
「うん。もう遅いし、これ以上メイワクかけられないでしょ……って何よ? その顔は」

唯の話しを聞く間、遊の顔はずっとニヤニヤしっぱなしだった
そして、ますます笑みを深くすると、唯に意味深な視線を向ける

「へ~、メイワクねェ…」
「だから何よっ? 言いたい事があるならはっきり…」
「ちょっと言えば、すぐにでもお前の隣りにアイツの布団敷いてやったのに。ん、それかもしかして一緒の布団がいいとか?」
「へ…一緒…」

瞬間、頭の中で一緒に寝ているところを想像してしまい、唯の顔が火を噴く

「な、何バカな事言ってんのよ!? そんなのダメに決まってるでしょっ!!」
「へ~、ホントかよ?」
「あ、当たり前じゃない! 何言ってるのっ」

腰に手を当ててぷんぷんと頬を膨らませる妹に遊は笑みを深くさせた

「ま、お前がそこまで言うならいいんだけどよ。でも、アイツ結構いいヤツじゃん?」
「え?」
「結城リトだよ。お前のカレシの」
「か、かかか、か、カレシ!!?」

顔を沸騰させたみたいに赤くなる唯に、遊はニッと歯を見せて笑った

「ま、正直おまえらがどんな関係なのか知らねーけどよ…」

遊は言葉を一旦止めると、唯の頭にポンっと手を乗せた

「今度、アイツが風邪引いた時は、お前がちゃんと看病してやれよ?」
「え…?」
「好きなんだろ? アイツのことが」
「そ…それは…まぁ…その…」

さっきまでの威勢がウソの様な、急に俯いてゴニョゴニョ口調になる唯に、遊は笑みを浮かべた

それはいつもの”からかい”の混じったモノではない、一人の兄としての笑みだった

「だったらちゃんと看てやらなきゃな! つーかそれだけで男なんてうれしいもんだし!」
「う、うれし……そ、そうなんだ…」
「って当たり前だろ! お前だって今日、アイツが来てうれしかっただろ?」
「…うん…」

顔をほんのりと赤らめながら頷く唯
その頭を遊はやさしく撫でる

「そんで、それが終わったら今度はいっぱい甘えてみろ」
「甘え…どうして?」
「どうしてって……お前、アイツに甘えたくないのかよ? つーか普通、尽くしてやったら今度は自分の番だろ?」
「そ、そんな事っ!? だいたい甘えるとか私……甘えるとか…甘え…」

唯の頭の中では、リトにべったりと寄り添う自分の姿が鮮明に浮かんでいる
そればかりか、甘い声で囁き合い、指を絡ませ、何度もキスをし、そして――――

「……っ!?」

真っ赤に染まったまま俯く唯に遊は”仕方ねェなぁ”と笑みを浮かべると、最後にポンポンと頭をたたく

「ま、お前のペースでいいんじゃねーか? けど、たまには素直になって何でも言ってみるのも大事だぜ? いっぱい甘えて、わがまま言って困らせる事もな」

いつものイタズラっぽい仕草の中に、真剣なモノが含まれている事に、唯はハッとなる

(お兄ちゃん…私のこと心配して…)

そういえばいつもより触れる手のぬくもりが温かいような気がする
唯は出かかった文句を喉の奥にしまい込むと、ふっと表情をやわらげた

「…心配なんかしなくたって私たちは大丈夫よ! だからその……と、時々でいいから相談とか…」
「へ~やっぱオレの言ったとおりじゃん! おまえらいつから付き合ってんだ?」

急にいつもの調子を取り戻した遊に、唯は赤くなったまま声に詰まらせた

「え、え? お…お兄…」
「あ~…、そーいやまだ言ってなかったよな? 今日、赤飯炊いてもらったぞ! 母さんもはりきってさ。よかったじゃん! ”いろいろ”」

いろいろの部分にわざと含みを持たせる遊に、唯は今度こそ顔を真っ赤にさせながら肩を震わせると、声を張り上げた

「お兄ちゃんのバカッ!! 何考えてるのよっ!」
「んな事でいちいち怒るなよ…。ウルサイ奴」
「うるさいとは何よ! うるさいとはっ! だいたいお兄ちゃんはね…」
「あーあー、わかったわかった。風邪なんだからさっさと寝ろよ…ったく」
唯と遊が古手川家のリビングで、相変わらずなやり取りを繰り広げていた同じ頃――――
「…っくしゅん」
家に帰ったリトは、リビングのソファに座りながらこの日、何度目かになるくしゃみで鼻を啜っていた
さっきから何度、鼻をかんでも一向に鼻水は止まらない
「もしかしてオレ、風邪引いた? ……まさかな…」
その”まさか”がこの数日後、やってくるのだが

それはまた別の話し――――

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