if 夏の思い出
プルルル♪春菜はベッドから体を起こし携帯を手に取る。
「ララさんから?」
ピッ「あ、もしもし春菜ー?あしたね、クラスのみんな誘ってプール行かない?」
「プール?」
「新しくオープンしたところがあるんだって!リトも行くって!」
「!」
突然のプールの誘い、しかもリトも行くという言葉に心を躍らせた春菜だが、すぐに顔を曇らせる。
「ありがとう、ララさん。でも私少し風邪気味で行けないんだ……」
「そっか……ごめんね、春菜」
「んーん、そんなことよりララさん、楽しんできてね?」
「うん、ありがとう春菜。それじゃお大事にね」
プツッ
「はぁ……いいなぁ、ララさん。結城くんとプールかぁ……」
春菜は羨ましそうにそうぼやいた。
―――その頃結城邸では……
「春菜、プール行けないってさ」
「えっ!なんで!?」
予想外の出来事にリトは素っ頓狂な声をあげる。
「風邪引いてこれないんだって。大丈夫かな、春菜……」
「そんな……」
ララとリトが心配そうな、残念そうな顔をしていると美柑がリビングからひょこっと顔を出してララに訊く。
「ララさん、春菜さんなんだって?」
「春菜ね、風邪引いてこれないんだって」
「そっか、お気の毒にね……ん?」
美柑がふとリトに目をやると、何か深刻そうな顔をしていることに気づく。
そしてリトが何を考えているのか察する美柑。
「ねぇ、リト」
『春菜ちゃん、大丈夫かな……風邪って、もしかしたら最近流行の新型インフルエンザなんじゃ……』
「ねぇってば!」
「ハッ!?……なんだ、美柑?」
「なんだ、じゃないわよ。
あんたは春菜さんのお見舞いに行きなさいよ?」
「えっ?」
「へっ?」
美柑の発言にリトとララが同時に驚きの声を上げる。
「あんたのその様子じゃ春菜さんが心配でたまらないんでしょ?」
図星を突かれ焦るリト。
「なっ!?べ、別にそんなことは……」
言い訳をするリトをよそに美柑は続ける。
「そんなんじゃプールきても溺れるがオチだよ、きっと。」
「溺れるってオレは何歳児扱いだ……」
「そんくらい今のあんたはぼーっとしてて危ないって言ってるの。ララさんには悪いけど……行ってあげなよ」
ララは全然!といった顔と明るい声でリトを後押しする。
「リト、いつも私と一緒にいるしたまには春菜のとこにも行ってあげてよ?」
「いいのか、ララ?」
「うん……少し残念だけど、春菜と約束したし」
「約束?」
「ううん、こっちの話しだよ」
「じゃあ行かせてもらうかな。
よし、じゃあまずは電話しないと」
そういって携帯を取り出すリトを美柑は止める。
「ストーップ!」
「ん……?オレなんかした?」
不思議そうな顔をするリトに美柑は耳打ちする。
「そーゆーのは突然こられたほうが嬉しいもんなんだよ、リト」
「へ?そしたら迷惑じゃないのか?」
女心がわからないリトの鈍感さに美柑は呆れた顔をしながら答える。
「あのね……そんなことしなくても、女の子は待ってるものなんだよ?」
それが好きな男だったらなおさら、と美柑は心の中で呟く。
「でもオレ……」
なかなか納得しないリトについに美柑は業を煮やした。
「いいからあんたはさっさと行ってきなさーい!」
リトはすぐさま準備をし、半ば追い出される形で家を後にした。
「ごめんね、ララさん」
「ううん……私、春菜と一緒にがんばるって約束しておきながらリトとずっと一緒に居て悪いなって。だからいいの。そんなことより、リトと春菜の分も楽しまないとね♪」
「ララさん……うん、今日はいっぱい楽しもうね!」
―――――――――――
そして春菜の家の前についたリトは一人悶々としていた。
『ううっ、きたのはいいけどいざとなると緊張する……』
扉の前で行ったり来たりしているリトは挙動不審極まりない。
しかしリトは美柑の言葉を思い出すと意を決し、チャイムを鳴らした。
ピンポーン♪
「はい?」
チャイムからは知らない女性の声がしたが、リトは落ち着いて言った。
「あ、西連寺さんのクラスメイトの結城と申します。西連寺さんが風邪を引いていると聞いてお見舞いに上がりました」
リトがそういうと少ししてから扉が開いた。
すると中からはラベンダーのようなきれいな紫色の髪をした女性が現れ、リトを中へ招き入れる。
そしてリトを席に座らせ冷たい麦茶を出す。
「あの、西連寺さんは?」
「今は部屋で寝てるわ」
「そうですか……」
「君、結城君っていったっけ?」
「あ、はい。突然お邪魔してスミマセン……」
やっぱ電話すればよかったかな、リトはそう思っていると秋穂は言った。
「へぇ~、君って優しいのね?話しに聞いたとおりだわ」
「え?」
「春菜ったら帰ってくると君の話しかしないのよ。」
「えぇ!?」
あの春菜ちゃんがなんでオレの!?とリトはひどく驚いた。
「それでどんな子なのかなーって思ってたけど礼儀も正しいしそれに……ふぅ~ん」
秋穂は一人納得すると時計を一瞥し、席を立ちながら続ける。
「ごめんね、結城くん。私これから仕事なの」
そう言うなり鞄を手に取り玄関へ向かう。
「あ、じゃあ僕もそろそろ……」
リトも席を立つ。が、
「悪いけど結城君は春菜のそばに居てくれない?」
リトを引き止めるように秋穂は言った。
その言葉リトは絶句するが、秋穂は続ける。
「学校じゃどうかわからないけど、春菜って昔から寂しがり屋でさ、だからお願いね?」
「え!?でも西連寺がイヤだったら……」
「そんな訳ないじゃない♪じゃ、よろしく頼むね♪」
そういうや否やリトの返事を待たずに家を出る秋穂。
「え……オレ……」
取り残されたリトは麦茶を一気に飲み干し、とりあえず春菜の部屋に行くことにした。
「西連寺、入るよ?」
扉を軽くノックし、そう言ったリトは春菜の部屋に入る。
そこにはすぅー、すぅーと穏やかな寝息を立てるパジャマ姿の春菜がいた。
『春菜ちゃん……すごいかわいい……』リトは春菜が寝てるベッドの端に腰掛ける。
そして春菜にしばらく見惚れていると急に春菜は苦しそうな声で寝言を言った。
「ん…結城くん……お願い……行かないで……行かないで!」
悪夢にでも魘されていたのか、ガバッと春菜が起きる。
春菜の視界にはぼやけながらもリトを捉えた。
「え…あれ?え!?結城くん!?どうしてここに!?」
プールに行ったはずの想い人が自分の家に居るというありえない事態に少しパニックに陥る春菜。
「落ち着いて、西連寺!……お見舞いに来たんだよ」
「え……?」
その一言で落ち着きを取り戻す春菜だが、それでも驚いた表情をしている。
「ごめん、何の連絡もなしに。嫌だった?」
「ううん、そんなことない……。でもララさんたちとプールに行ったんじゃ……?」
「そのことなんだけどさ、オレ行くのやめたんだ」
「え!?どうして?」
「その……西連寺のことが心配だったから……」
春菜の疑問に顔を赤らめながらも答えるリト。
「え……」
「そ、それより風邪はどうなんだ?」
「うん、もう熱は引いてるから大丈夫だとは思うけど」
それを聞いたリトはほっとする。
「よかった……本当に心配だったんだ」
「ありがとう、結城くん……でもプール行かなくてよかったの?」
「あぁ……西連寺がいないのに行ったって意味がないと思って……って、あれ?」
リトの口からぽろっと本心がこぼれる。
それを聞いた春菜は即座に考えた。
ララのプールの誘いを断ってまでお見舞いに来てくれたことと今の発言。
もしかしてリトも私のことが好きなのではないか?という考えに辿りつき、そしてこの状況はチャンスだと春菜は思った。
そして春菜は賭けにでようと考えた。
今ここでリトに告白してしまおうと。
もしOKなら晴れてリトと恋人になれる。
ダメだったのなら自分は退いてララの応援に徹しようと。
ララには悪いが、恋なんてものはどちらかが前に出ないと始まらない。
そしてこのままの関係では一生埒が明かない、そう春菜は考え決意した。
そして春菜が考え込んでる間に、リトは今の発言に気まずいと思ったのか撤回しようとした。
「ごめん西連寺、今のはそんな意味で言ったんじゃ……」
「本当にそう……なの?」
「へっ?」
リトは春菜の目を見ると、その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「!?」
リトはまさか、と思う。
しかしそれは確信に変わった。
秋穂の言っていたこと、今の春菜の問い、素振り。
リトはまさかが確信に変わり、覚悟を決めて言った。
「いや……違う。オレは西連寺のことが好きだ」
「ほんとうに……?」
「あぁ。中学の時から……」
「うれしい……私も中二の時から好きだったんだよ?結城くん……」
春菜の瞳からは喜びのあまり涙が溢れ出す。
そんな春菜を見てリトは安心させるかのようにゆっくりと抱きしめ、胸に顔を埋めさせる。
「……ごめん、オレ鈍感で」
「んーん、そんなこと言ったら私のほうだって……だからお互い様、ね?」
「春菜ちゃん……」
春菜の潤った瞳での上目遣いによりリトの理性を保っていた鎖が千切れる。
それは春菜も同じで、名前で呼ばれたことにより理性が吹っ飛んでいた。
そして見つめ合い、どちらからともなく唇を交わす。
「ん……」
唇が触れている時だけの甘い感覚に二人は酔いしれ、虜になる。
幾度となく触れるだけの繰り返す。
そしてそれ以上の感覚を味わいたいと、二人は舌を絡め始める。
「ん…ふぅ…んっぷ…ちゅるっ……ぷはぁ…」
組んず解れつの濃厚なキス。
しばらくしてリトは舌を離すと春菜の肩を掴みベッドに優しく押し倒す。
「オレ……春菜ちゃんが欲しい……」
「結城くん……私ももう我慢できそうにないよ……」
そう言うなりリトの首に腕を回し顔を引き寄せ再び口づけをする。
「ん…ちゅぱ…ふぅん…んぅ…」
リトと春菜は互いの口内を味わい舌を啜り合う。
その間にリトは春菜のパジャマのボタンを外して服を脱がしていく。
すると小振りながらも形の整った、きれいな胸が露わになる。
そして存分にキスを堪能した二人は次のステップへ移ろうとする。
「ね……結城くんのも見せて?」
「うん」
言われるがままにリトは身につけているものを外していく。
春菜も残った衣服を脱いでいく。
そして二人は一糸纏わぬ体になり、リトは再び春菜に覆い被さる。
リトの目には生白い体、うっすらと日焼けした肢体がうつる。
「春菜ちゃんの体、すごく綺麗……」
手をゆっくりと這わせその小振りな胸を揉みしだく。
「ふぁ…ぁあん…やだ、くすぐったい…あっ…」
「春菜ちゃんの胸、すごい柔らかくて暖かくて…気持ちいいよ」
胸に夢中になっているリトは桜色の乳首にしゃぶりつく。
「ひゃっ…んぅ…そこ…ダメぇ……」
そんな春菜を見て乳首を重点的に、先程よりも激しくしゃぶり愛撫を続ける。
「ダメだってばぁ……あっ!そんな激しく!だめ、イッちゃうっ!ひゃあああぁぁっ!」
体を弓なりに反らし春菜は果てた。
「はぁ…はぁ……結城くん……お願い……」
「うん……」
リトは自分のそそり勃つ男根を春菜の秘所にあてがうと春菜に訊く。
「初めてだから優しくできないかもしれないけど……いい?春菜ちゃん」
「うん……きて、結城くん……大丈夫だから」
そういう春菜の顔は少し怯えているようにも見えなくもない。
だがリトは出来る限り優しくしよう、そう誓った。
「痛かったら言ってな?」
「うん……」
「春菜ちゃん、好きだよ……」
春菜の額にキスを落とすと、リトは男根を挿入した。
「ん……んんっ!」
必死に堪えようとする春菜だが、予想以上の痛みに顔を歪める。
「ごめん、春菜ちゃん!やっぱり……」
「お願い、結城くん!抜かないで!」
「でも……」
春菜を心配して男根を引き抜こうとするリトに春菜は足をリトの太股に絡め制止させる。
「私も結城くんが欲しいの……結城くんのすべてが……」
「春菜ちゃん……わかった」
心の内では納得のいかなかったリトだが彼女の気持ちに応えようと男根を少しずつ奥へと進めていった。
「全部入ったよ、春菜ちゃん」
「はぁ…はぁ……私の中、結城くんのでいっぱい……」
痛みとうれしさ、その両方で涙を流す春菜。
「ごめん、春菜ちゃん……痛いよね」
リトは春菜に謝りながらもなんとか春菜の痛みを紛らわしてやろうと体をぎゅっと抱きしめキスをする。
「痛いけど……でも、それ以上にうれしいの。すごい幸せ……」
「春菜ちゃん……うん、オレもすげー幸せだよ」
二人は抱きしめ合ったまま、その幸福感を噛みしめる。
しかし動かなくてもリトの男根に千変万化の快感を与えてくる春菜にリトは射精感に襲われるが、必死に耐える。
『春菜ちゃんが必死に痛みを我慢してたのにここでオレがイッちゃったら立つ瀬がねーって!でもやばい……』「結城くん……?」
「な、なに?春菜ちゃん」
「もう動いても大丈夫だよ」
「えっ?でもまだ痛みが……」
「んーん、もう痛くないわ。
それに……」
「?」
「動いてもらったほうが気持ちいいかも……」
「わかった、じゃあ動くよ?」
春菜の承諾を得てゆっくりと腰を動かし始めるリト。
「あ…はぁ、ん…んんっ!」
春菜も感じているのを確認するとだんだんとスピードをあげていく。
「ひゃぁっ!ふぁっ!あぁんっ!激しっ、すぎだよぉ……!」
「春菜ちゃん…っ、オレもう……っ」
「んあぁっ!結城くんっ!中に……っ、全部ちょうだいっ!」
「春菜ちゃんっ!」
「結城くぅんっ!」
二人は互いの名前を呼ぶと同時に果てた。
「はぁ…はぁ……あっ!!」
「どうしたの春菜ちゃん?」
急に大声を上げる春菜にリトは少し驚く。
「そういえばお姉ちゃんが居たんだった……」
「大丈夫だよ、春菜ちゃん。お姉さんなら仕事行くってさっき出ていったよ?」
「よかったぁ……」
優しく諭すようなリトの口調と言葉に、不安そうだった春菜の顔がすぐに安堵のものへと変わる。
「そういえば春菜ちゃん」
「なぁに、結城くん?」
「さっき魘されてたみたいだけど……どんな夢を見てたの?」
「……結城くんがね、どんどん遠くに行っちゃう夢を見てたの。
どんなに大声で呼んでも、手を伸ばしても遠くに行っちゃうの……」
「そっか……」
リトは春菜を安心させるように優しく包み込むように抱きしめ言う。
「ごめん……でももう大丈夫だから……もう二度とそんな思いはさせないから……ずっと傍に居る、離さないから」
「結城くん……!」
春菜は感極まり、嬉し涙を流しながらもリトをぎゅっと抱き返す。
しばらくして、リトは春菜の肩を優しく掴むと体を少し離し、ゆっくりと口を開く。
「こんなことしといて今更なんだけどさ、」
「?」
途中で言葉が止まったリトを不思議に思い春菜はリトの目を見る。
するといつになくリトの真剣な瞳が春菜の瞳に映る。
そしてリトは春菜の瞳を見据えて言った。
「オレと……付き合ってください」
「……!はい……。」
春菜はリトの言う付き合うという言葉の意味を理解するとリトに飛びついて満面の笑顔で快諾した。
「これからもずっと一緒だよ?結城くん……」
「あぁ……ずっと、ずっと……」
「結城くん……」
「春菜ちゃん……」
今まですれ違っていた想いがやっと通じた、そう再び確信した二人は口づけを交わす。
一度、二度。
そうして何度かしているうちにだんだんと舌を、唾液を絡め合うディープキスへと変わる。
その後も二人は先程みたく、本能の赴くままに互いの全てを求め合った。
そして時間も忘れて楽しんでいた二人が我に返ったのは、秋穂がドアの鍵を開ける音だったという。